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自閉症と自閉症スペクトラムとは?症状と診断基準とプログラミング学習方法

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自閉症とは?

現在の自閉症とは、先天的な脳認知機能の発達の遅れや偏りである発達障害のひとつとして、社会性の発達の遅れが中心になっている障害とされています。

昔の自閉症の背景には、親の育て方の原因や、悲しかったり辛かったりという経験から、自らが引きこもり情緒不安定になる問題が指摘されていました。

当時、自閉症の8割は知的障害の範囲として考えられていましたが、最近は知的障害の範囲ではない自閉症のことを「高機能自閉症」と呼んだり、言葉の発達に遅れのない自閉症を「アスペルガー障害」と呼ばれていました。

自閉症の定義<Autistic Disorder>

自閉症とは、3歳位までに現れ、1他人との社会的関係の形成の困難さ、2言葉の発達の遅れ、3興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。

高機能自閉症の定義 <High-Functioning Autism>

高機能自閉症とは、3歳位までに現れ、1他人との社会的関係の形成の困難さ、2言葉の発達の遅れ、3興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。
また、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。

出典:主な発達障害の定義について(文部科学省)

このような自閉症を中心と考え、アスペルガー障害や小児期破壊性障害を含めた概念として「広汎性発達障害」と呼ばれていました。

広汎性発達障害は、知的障害の範囲からそうでない範囲まで含む概念があり、特別支援にいる子からそうでない普通学級が対象の子もいます。

自閉症の中でも自閉症スペクトラムとは?

アメリカの精神医学会では、2013年に公開した「診断・統計マニュアル第5段(DSM−5)」において、主に「広汎性発達障害」と診断されていたものを、「自閉症スペクトラム」に変更しました。

広汎性発達障害よりもスペクトラム症(虹の色など区切るのが難しい連続体)のことを意識づけているとのことです。

自閉症スペクトラム症は、持続する相互的な社会コミュニケーションや対人関係相互対応の障害(基準A)、および限定された反復的な行動・趣味、または活動の様式で(基準B)、これらの症状は幼児期早期から認められ、日々の活動を制限するか障害する(基準CとD)としています。

これ以外の特徴で、感覚や知覚過敏といわれる特徴も指摘されています。

例えば、砂遊びが嫌いな子、だっこやおんぶを苦手とする子、味覚が激しく偏食だったりする子など、様々な子がいます。

自閉症スペクトラムによく見られる特徴

自閉症スペクトラムの特徴として、以下が該当します。

・人の表情や気持ちが読めない
・比喩や皮肉がわからない
・パターン化されたものを好む
・予定変更や切り替えに対応することが困難
・趣味の幅が狭い
・仲間意識を持つことが困難またはできない

言葉の遅れもなく、知的障害のある自閉症から、知的レベルの高いアスペルガー症候群まで同じ病態と捉え、まとめて自閉症性障害の総称です。
また、社会性の障害と強いこだわりという2つの特徴に加えて、感覚に独特な偏りもあります。

光や音、触覚、匂いなどにも通常とは異なる反応をしめる人もいます。

自閉症スペクトラムの診断基準

自閉症スペクトラムの子供は、生後のある程度の頃から兆候が現れる場合があります。

自閉症スペクトラムの子によくあることですが、お母さんと目を合わせなかったり、あやしていても喜ばなかったりと親への愛着行動が乏しいことが特徴です。

そうした行動の中であることは、欲しいものを取ってもらう時、一緒に来て欲しいとき、大人の手を掴んで引っ張って行こうとする「クレーン現象」と呼ばれる行動をしたりします。

幼児期になっても同年代の子供と遊ばなかったり、一人遊びが大好きだったりという行動様子のときに、自閉症スペクトラムが疑われます。

自閉症スペクトラムの診断基準は、アメリア精神医学会「DSM−5」基づき、以下のことを差します。

色々な場面における社会的コミュニケーションと社会関係の障害で、以下の特徴が現在にある、または過去にあったとします。以下の例は、典型的なパターン例であり、必ずしもなくてはならないものではありません。

《A》
(1)相互の対人的・情緒的関係の障害で、例えば、異常な対人関的接近や通常の会話のやりとりができないこと、情緒や関心、愛情を他人と共有できないことや社会的相互の関係を開始、応答することができない。
(2)対人的相互反応で非言語コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、まとまりの悪い言語的・非言語的コミュニケーションから、視線を合わせることと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。
(3)人間関係の開始、理解と持続の障害ために、さまざまな社会場面にふさわしくない行動を調整するとが困難であることや、想像的な遊びの共有や友人を作ることの
困難であること、また友人への関心の欠如などがある。

制限されたあるいは反復する行動模式や関心、活動が以下の例のうち2つ異常ある、現在または過去にあったこととします。

《B》
(1)型にはまったあるいは、反復的な動き、ものの扱い方、あるいは話し方(例:単純な常同運動、おもちゃを並べること、ものをぺらぺらと振ること、反響言語、決まり言葉など)。
(2)同一性への固執、習慣へのかたくななこだわり、または言語的・非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつ、毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求)
(3)強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:奇妙な対象物への強い愛着や執着、非常に狭く固執的興味や関心)
(4)感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音、感覚に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光や動き回ることに幻惑されるなど)

《C》 症状は発達早期にみられなければならない(ただし、社会的要求が能力の限界を超えるまで症状は明らかにならないかもしれないし、その後の生活で学んだ対応の仕方によって隠されている場合もある。また後で獲得された対応方略によって隠蔽されることがある)。

《D》 これらの症状によって、社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に意味のある障害を起こしている。

《E》 これらの障害は、知的能力障害(知的発達症)または全般的発達遅延ではうまく説明できない。知的障害と自閉スペクトラム症はしばしば同時に起こり、自閉スペクトラム症と知的能力障害の併存の診断を下すためには、社会的コミュニケーションが全般的な発達の水準から期待されるものより低くならなければならない。

出典:アメリア精神医学会「DSM−5」精神疾患と分類と診断の手引きより

自閉症スペクトラムのプログラミング学習支援

自閉症スペクトラムの子のプログラミング学習支援について、特徴をまとめてみました。

自閉症スペクトラムの苦手なこと①抽象的な概念の理解

自閉症スペクトラムの子が苦手な事は、「こそあど」言葉や「ロボットの上」や「ロボットの下」といった空間的な位置を言葉で表わしたり、表した言葉の理解をするのがとても苦手です。

例えば、カレンダーを作るソースコード(ミログラミング)を作るとき、昨日、今日、明日という言葉を伝えても、テーブルに昨日は(9月1日)、今日は(9月2日)、明日は(9月3日)、次の日になると今日は(9月3日)、明日は(9月4日)と、立ち位置によって使う言葉が変わるなど、複数のルールの理解がとても苦手です。

「あれ」「これ」など抽象的なことばで伝えるのではなく、なるべく具体的な指示のでプログラミング学習を進めましょう。複数の処理を一度に伝えず、ひとつずつ処理を書けば、集中して覚える事ができます。

抽象的な教え方が苦手な子にとって良い学習方法は、イメージ(絵)で伝える事です。
自閉症スペクトラムの子供には、絵カードや写真によるコミュニケーションの有効性が注目されています。理由は、聴覚コミュニケーションよりも視覚コミュニケーションの方が得意と特徴があるとされ、絵カードだと具体的で明確な指示が理解しやすいからだと考えられています。

やはり、イメージできないことを言葉だけで指示されても、行動に移すのは難しいものです
逆を言えば、イメージできる事は行動に起こしやすいので、フローチャートや全体図を用いる事が大切です。

閉症スペクトラムの苦手なこと②時系列の理解

言葉の遅れがある自閉症スペクトラムの場合は、過去の出来事を今起こったかのように感じてしまうことがあり、極度に不安に陥ることもありますし、プログラミングのフローを考えてることも苦手なので、問題が起こった時に対処の方法(不安を落ち着かせる)スキルを身に付けることが遅れています。

例えば今日の課題は、今日はドローンを飛ばすところまでやってみましょうという表現に対し、「ところまで」という仮定法が理解できずに、ドローンを飛ばすということだけ理解できたとしたら、子供の頭の中は、飛ばすことだけでいっぱいに、プログラミングするという過程を止めてしまう時があります。

このような時に、子供の障がいが原因というわけではなく、教師(大人)の子供の認知や言語の発達に配慮していないこと教元が原因ということもあります。

仮定法ではなく、プログラミングの絵カードやスクラッチなどで課題の順番を明示することで、子供も理解しやすくなります。

閉症スペクトラムの苦手なこと③こだわりと常同行動

自閉症や自閉症スペクトラム症の特徴として、「こだわり・常同行動」があります。
常同行動で代表的な行動といえば、ミニカーや車を一列に並べて遊ぶことをひたすら続けたり、扇風機やタイヤなど回るものを長時間み過ごしたり、決められたルールそむくと、癇癪(かんしゃく)を起こしたり、同じような服を着ると安心したりなど、ある行動を常に繰り返し続けることを意味しています。

この「こだわり・常同行動」は、自閉症スペクトラムの最大の特徴であり、一つのものが永遠に続くわけではなく、言葉や認知、概念の発達によっても変化していくことが多くあります。

こだわりの意味としてプログラミングで例えると、新しいイメージが理解できないと、過去の学習したパターンを繰り返しやすくなります。
新しいプログラミングを覚えても、勉強が辛くなり、疲れてくると、新しいことを覚えようとすることよりも、その前に確実に覚えたプログラミングの方法を選びがちです。

チャレンジしないことを「こだわり」としてしまうと、自閉症スペクトラムの子供は、イメージする力の発達から今までの行動を繰り返したり、その部分のこと他人から見ると、「こだわりだ」と思われてしまうかもしれません。

本当は、ある行動を常に繰り返し続けること全てを「こだわりが強い」というわけではなく、感覚野遊びから次の遊びに発達しているだけなのかもしれません。

こだわりをなくすのではなく、許せる範囲を広げていくのが発達支援だと考えています。
こだわりを無くそうとするのではなく、こだわらなくても良いプログラミング学習をしていけば良いのです。

自閉症スペクトラムの苦手なこと④コミュニケーションが困難

自閉症スペクトラムの子は、会話のやりとりや感情を共有することが難しいと言われています。そのため、人とのコミュニケーションが困難になります。

コミュニケーションには、表出(言葉を話すことや表情・手振り身振りなどで表現する)と理解(人の話を聞くことや相手の表情や仕草からの理解)があります。

表情や声などから相手の感情を読み解くことや、身振りや手振りで相手の意図としていることを理解するなど、非言語的なコミュニケーションは日常でもよく使われています。言語的なコミュニケーションが理解できていても、非言語的なコミュニケーションは苦手という子が多くいます。

昔は、不適切な行動として、オウム返しなどの言葉や表現の特徴を減少させようとしていたこともあったようですが、現在はコミュニケーションの発達の一歩と考え減らそうとするのではなく、それを生かして機能化する(意味を持たせていく)アプローチも試されています。

例えば、プログラミングのテスト中に「新しいページが開いた?」と聞かれたとき、「新しいページが開いた?」と繰り返してしまうことがあると思います。悪気があるわけではなく、何か答えなければと思ってオウム返しをしているので、反応が欲しい場合は、わかりやすい言葉で再度問いかけてみたり、言い方を少し変えてみたりしながら、子供の目線になってゆっくり対応しましょう。

まとめ

自閉症や自閉症スペクトラムの子は、抽象的な概念の理解、時系列の理解、こだわりと常同行動、コミュニケーションが困難があります。

発達障害だからこの勉強法という決まりはなく、その子に合った勉強法を見つけ楽しく学べる環境を整えてあげることが基本になります。

プログラミングの学習にとって共通であり大切な事は、どんな小さな出来事でも、褒めたり認めたりするなど、ポジティブなフィードバックがとても重要です。

プログラミング学習を通して、他者に関心を持ち出したり、褒められることで喜んだりすることが報告されていますので、本人に合った社会参加や学習ができるような支援が重要だと考えられます。

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