今回は、コロナ禍に急増したIT派遣・SES(システムエンジニアリングサービス)会社や関連企業による詐欺・不正事例を取り上げます。「驚くほど身近にあった」実態、そして私たちが学ぶべき教訓をお伝えします。
1. IT導入補助金を狙ったウェブ制作会社の不正受給
2022年2月、大阪府警がウェブ制作会社「ワールドエージェント」の代表ら5人を逮捕しました。彼らは国のIT導入補助金(コロナ対応で拡充)を狙い、複数の虚偽申請を行った疑いです。数百件の申請で不正に受給した可能性があるとされています
教訓:どんなに「国の支援制度」でも、補助金申請には必ず正しい手続きと実績が必要。ダークな誘惑に乗ると思わぬ泥沼に。
2. 派遣元社員による個人情報流出事件
2023年10月、NHKニュースで明らかになった事例では、IT系人材サービス会社に派遣されていた社員が、国の補助金申請者11万人以上の個人情報を不正に持ち出した疑いで会社が警察に被害届を提出しています 。
教訓:派遣元・派遣先問わず、個人情報を扱う企業には厳格な管理体制と派遣社員への教育が絶対に必要です。
3. 架空のIT業者を装う詐欺グループ
2024年2月、鹿児島県警が架空のIT関連業者を偽装し、法人名義で持続化給付金100万円を不正取得した容疑で3人を逮捕しました。他にも同様の詐欺を繰り返しており、被害額は累計で700万円規模に至っています。
教訓:IT業者は“事実を装いやすい”背景があり、偽装の温床になりやすい点が問題です。
4. SES契約での経歴詐称、東京地裁が違法認定
SES契約の現場では、未経験者に5年の実務経験があると虚偽説明して派遣するという不誠実なビジネス形態が存在します。東京地裁はこの行為を「詐欺行為またはその準備」として違法認定し、使用者責任も認めています。
教訓:人材業界での経歴詐称は、派遣先・派遣元双方に大きなリスク。取引の信頼性が根本から揺らぎます。
まとめ:IT派遣会社が直面するリスクと教訓
よくある手口と問題点
行為 | 内容 |
---|---|
補助金・助成金の虚偽申請 | 架空業者を装い、不正受給 |
個人情報の持ち出し | 派遣社員による流出 |
経歴詐称 | SES契約の虚偽説明 |
情報・補助金ビジネスに群がる輩 | コンサル、行政書士、不正仲介業者 |
✔ IT派遣会社の採るべき対策
- コンプライアンスの徹底
補助金申請は公的資料での根拠確認を。虚偽申請は即アウト。 - 個人情報管理の強化
アクセス権限、ログ監視、派遣社員教育の3本柱で再発防止を。 - 経歴チェックの厳格化
SES契約では、応募者と契約先の両方に正確情報を公開する仕組みを。 - 教育と啓発の継続実施
社内研修で「詐欺とは何か」「リスクとは何か」を定期的に共有。 - トラブル時の対応制度を整備
内部通報窓口、誤申請の是正手続、公的機関への相談体制などを完備。
最後に:IT派遣業は安心と信頼の上にある
IT派遣会社やSES企業は、技術力だけでなく信頼と誠実さが問われる業界です。コロナ禍に端を発した詐欺事件は、「制度を悪用すれば誰でも儲かる」という幻想を打ち砕きました。
- 補助金・助成金は“支援策”であり、ビジネスの種にしてはならない
- 個人情報を扱う仕事に携わる以上、情報管理は命綱
- SES契約には透明性と誠実さが命
真面目に取り組む会社こそ、今後の成長に信頼と強さを備えられます。
皆さんの会社でも、今一度「コンプライアンス/情報管理/経歴チェック」の3点セットを見直してみませんか?
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